「え、えーと…」

今私はどういう状況にあるのだろう、よく整理してみよう。別に普通に学校から帰ろうとしてでも私の家は少し遠いからちょっと近道しようかななんて考えて塀とか乗り越えてみて変な路地に入り込んじゃって(もうこの時点で普通じゃないよ…!)そしたら怖い顔したお兄さんたちが一杯溜まって座り込んでて談笑中ですかーなんて考えて通り過ぎようとしたら何か話しかけられたから道とか尋ねるつもりですかそうしようここら辺そんなに詳しくないんだけどなあとか思ってたらいきなり廃墟?っぽい所に連れて行かれたんだよねそれでここで何かするのかな私別に居てもしょうがなくないかななんて思ったらこの有様ですかどうして私はお兄さんたちに囲まれているんでしょうか。やっぱり日吉と帰れば良かったかな。でもテニス部の練習あったから悪いしなあ(私が待ってれば良かったのか!)てゆうかこの人たち自分がやってることありがちだって思わないのかな。何年前のドラマだよ…!

「キミさあ〜今暇〜?俺達とちょっと遊ばな〜い?」
「いえ、今急いでますんで」

急いでるから近道でこんな所通ったんだってば。あ、別に急用があるわけじゃないんだけどね。ちょっとめんどくさかったんだよ、うん。大体こいつらのしゃべり方ほんといつのドラマだって思うんだけどなあ。まだ時代劇っぽいしゃべり方の方がかっこいいよ。今なら跡部の「俺様」とかもかっこいいって言えるよ、多分。

「そんな事言わないでよ〜」
「キミ気い強いな〜ちょっと好みー、みたいなー」
「もしかして初めてとか?大丈夫だって、俺たちに任せてよ〜」

誰が任せるか。ちょっと、人の服とか触るな。こいつらの手が私のスカートの中に入ってくる、気持ち悪い。そうするともう一人が調子に乗って私の制服のリボンを取った。ちょっとなくさないで欲しい。スペアとか持ってないんだから。そいつら私の体なんて触って何が楽しいのかな。皆ニヤニヤしてて気持ち悪い、いや気色悪い。どっちも一緒だけど。本当、嫌だ。私の背中が冷たい床についてお腹あたりに重みを感じる。正直ちょっと怖いのになあ。そりゃあよく子供ー、とか言われるけど私だって女の末端、少しは怖いよ、ひよし。

「あれれー、まさか本当にキミ処女?」
「ギャハハいーじゃんやっちゃえよー」
「ひ、よし…日吉…」
「誰だよ日吉ってー?もしかしてカレシ〜?キミカレシいるのにしてないの?意外と初心なんだねーやりがいあるー」
「やだ、やだよ…」
「いまさら遅…グハァッ!」

重みがいきなり無くなる。私はのろのろと起き上がると見慣れた背中が見えてさっき私のお腹に乗っていた男が吹っ飛んでいて他のやつらはその見慣れた背中の主の登場に戸惑ってる。つまり、私のヒーローの登場。

「女性に手出すようじゃ、人間やめたらどうだ?」
「っんだとこの野郎!」
「やっちまえ!」


日吉は得意の古武術でアクション映画みたいに男たちを倒していった。ものすごくかっこいい(いつもかっこいいけどね!)日吉は動こうとしない私の服をてきぱきと直して廃墟を出た。日吉が抱きしめてくれると体の力が一気に抜けた。

「本当、何してんですか貴女は」
「かっこよかったよ日吉。タイミングもばっちり、ヒーローみたいだった」
「そういう問題じゃないでしょう。いつも繋がる先輩の携帯が繋がらないから追いかけてみれば…」
「そっかあ、じゃあ日吉がいつでも追いかけてきてくれるんなら携帯の電源切ってこうかなー」
「馬鹿ですか」
「痛い痛い!グリグリしないで!じょ、冗談だってば!」
「心配したんですよ……先輩」





(ありがちヒーローに助けられる私はありがちヒロインになれただろうか)




ありがちヒーロー