「ね、ね、跡部!俺かっこE〜でしょ!」
「あーあー、そうですね、ハイハイ」
「何その気乗りしない返事ー!俺跡部の結婚式行ってやんないからなー!」
「勝手にしろよ。つうか決まってもねえよ」
「大丈夫、ジローはかっこいいよ」
「マジで!?やっぱり大好きー!」
「おいさっさと用意しろよ俺様が準備してやってるってんだからよ」
「ハイハーイ!」
「…どんな格好なんやろな…ああ〜ええな〜俺もと結婚したいわ〜」
「侑士キモイから」
俺と侑士は一番乗りに会場に来た。何たってあのジローとの結婚式なんだから。は氷帝のテニス部のマネージャーを高校までやってくれて、その後大学に行っても皆でつるんでた仲なんだから気合がうっかり入ってすんげー早い時間に来ちまった。そしたら途中で侑士と会って合流した。侑士は背が高いからめちゃくちゃスーツが似合ってた。俺も中学の頃よりは確かに身長は伸びたけどまだまだ侑士には追いつけないから(ていうか侑士には一生身長は追いつかない気がする)スーツが変に重い感じがした。て、事はうわ…鳳とかぜってぇ来るから本当またチビ扱いされんだ、きっと。あ、でも主役のジローも結構チビだから大丈夫だ、多分。は俺よりも小さい。本当に良かった。チビカップルで。そういえば今日って…
「しっかしジローも誕生日に結婚式やてえらいロマンチストやないか」
「一番のロマンチストはお前だと思う」
「何やそれ。まー確かに俺はめっちゃくちゃロマンチストやで?夜景とか厳選すんもん」
「マジかよキモー」
「キモーはないやろキモーは」
「お、何だよ早ーな」
「あ、宍戸と鳳やんけ」
宍戸は普通にいや、ホントに普通なスーツだった。こいつ本当平凡だな…!みたいな普通さだった。だから余計隣の鳳がウザ…!やばいウザイ。別に悪い意味でも鳳が何かしたわけでもない。ただ何ていうかこの慣れてます的なオーラというかいかにもブルジョワですみたいなオーラがムカつく…どうしようもなく何か殴りたい感じがした。何なんだこいつ。こんなにホワホワして人の良い笑顔なのにムカつく奴がいたのか。ていうかちょっと、ほんのちょっとだけどこいつ中学の頃より身長伸びたんじゃないか。多分電車とか乗ったらひょっこり頭が他の奴らより飛び出るタイプだ。その前にこのブルジョワは跡部と同じで電車なんて乗らなそうだ。
「あ、日吉と滝や。何なん、樺地も一緒なん?」
「ええ、まぁ今日は跡部さんは準備の方に行ってるらしいんで」
「そうそう。今日の結婚式は跡部の方で仕切るらしいね」
「ほー」
披露宴の会場に入った時、正直言葉を無くした。豪華すぎだっての。特に宍戸がビビってた、つーか皆跡部がここまでやるとは、的な感じだった(鳳は余裕かましてたけどな!)なんていうか、とりあえず凄かった。俺、国語とかあんま得意じゃねーし、つーか寧ろ普通に苦手だから上手く表現出来ないけどとにかく凄い。今日は結婚式って言ってもジローたちは親戚とか呼ばないらしくて呼ばれたのは俺達だけなのに、何でこんなにする必要があるんだ。ぶっちゃけ親族が皆集まるような結婚式より凄い。
「すげぇな…」
「よっしゃ俺の結婚式の時もきっと跡部にやってもらうわ」
「お前は駄目だ忍足」
「何でや!酷いわ景ちゃん!つかいきなり出てくんなや驚くやろ」
「うるせぇな」
「準備は終わったのかい?」
「ああ。今お出ましだぜ」
何だろう…出てきたんだけど、ジローがものすごく男前で、そりゃあ今日が誕生日なんだから俺より実質は一個年上になったってのは関係なくめちゃくちゃ大人びて見えた。寝ぼけてなくて、だけど強い相手と戦った時のあのハイテンションでもなくて、落ち着いた大人なジローがそこにいた。よく小さいガキんちょがヒーロー物とか見て「かっけぇー!」って言うけどあんな感じ。別にジローがヒーローみたいに見えるわけじゃない。何か憧れるようなかっこよさがある。は中学の時に一緒に馬鹿やったじゃなくてちゃんとした一人の女だった。今まで化粧とかした顔なんてほとんど見た覚えが無いのに口紅とかがばっちり決まってた。
つうか結婚式って言ってもやっぱり俺達内輪のやつだからきっちり型にはまったやつなわけなくて当のジローが最初にはっちゃけ始めた。
「皆俺かっこいいっしょー!跡部ってば酷いんだよーハイハイだって!」
「めっちゃかっこええでジローうん、ホンマええ男や」
「マジで!?押したりもかっこEーよ!」
「いや、忍足やから」
「綺麗ですよ先輩!」
「チョタそれホント?嬉しいなぁ。日吉は?日吉はどう思う?」
「まぁ…いいんじゃないんですか?」
「あ、日吉照れてる?」
「うっせえんだよ鳳!」
「うわー日吉が怒ったー」
「お前ら準備はいいな?」
「勿論」
「え、どしたの?新郎の俺に内緒で何やってんの?」
「「「「「「「「「ハッピーバースディ、ジロー!」」」」」」」」」
(どんな君にも、おめでとう)