※「咎狗の血」シキED3のパロです
長い、長い廊下に革靴の音が響く。その足取りは自信に溢れた威厳のあるものだった。カツン、カツンとその音が硬い廊下を鳴らす度に廊下の両端に侍っている体格のいい男達の背筋がピンと伸びる。革靴を鳴らすそのブラウンの髪を持った長身の男が日本人なのにも関わらず澄んだ青色の瞳が少し両端に向けられると男達は即様に敬礼をした。それには何も言わず、当たり前だ、というように茶髪の男が歩く。廊下の奥に造られた仰々しい扉の向こうから、艶かしい声が洩れていた。
「…あっ、い…んあっ、」
「……」
「あ…帰ってきた…ぁ」
茶髪の男はその扉のドアノブに手を掛けると遠慮もなくバン、と開けた。その瞬間、茶髪の男の首筋に誰かが飛びついた。Yシャツ一枚をだらしなく羽織った裾から細い足が伸びている。美しいオレンジの髪に、白く濁った液体が飛び散って濡れて撓っていた。深い緑色の瞳はトロンと茶髪の男を見上げていた。
「たか、ひさ…」
「で、今日は誰なんですか?清純」
「ん…あの、」
清純はゆっくりと先ほど抱かれていたらしい男を指差した。その男は極度に何かを怖れる様にびくびくと震えた。何も言わずに性交の跡を隠そうともせずに佇んでいる。貴久はその男を一瞥してから清純の髪を掴み護衛の男達を尻目に抱きしめた。清純の耳元で口元を笑いに歪めて囁く。その声に清純は心酔したような表情を向けた。
「仕方ないですね…僕が見ていないとすぐにこうだ…」
「…んん」
貴久は触れるだけの口付けをすると、清純を離しスーツの胸ポケットからシルバーの拳銃を取り出し遠慮なく震えている男に近づく。170センチメートル強はある貴久の身長よりも頭一つほども高いであろう男の眉間に堂々と拳銃を突きつける。命乞いをしようと口をパクパクさせている男を射抜くような視線で刺すと躊躇もなく引き金を、引いた。パン、と控えめな音を立て男の後頭部から赤黒い液体が霧を吹いて飛び散った。スローモーションで倒れた男を爪先で蹴飛ばすと、その死体を知らない虫を観察する子供のように興味津々に覗き見る清純を肩を抱くとそのまた奥の、貴久の寝室に向かう。貴久は開かれた扉の表にいた護衛の一人に「ゴミを片付けておいて下さい」と敬語だが威圧的な口調で言うと護衛は「ハッ」と短く承った。
「清純、僕ではないとどうせ真に満足することなどないのだから。さぁ、来なさい」
「うん…」
「本当に、淫乱だ…」
(快楽と独裁の中に愛を見る)