「侑士君、がんばってね」
「ああ、が見とってくれるんやから頑張らんわ
けにもいかへんやろ」
せや、頑張らないかへんのや。少し太陽が眩しい
なぁ。さっさとジャージに着替えてしまおか。そ
んでラケット持って、コートに入るんや。ええー
風や。俺の髪がなびいとるわ。あー跡部のなびき
かたなんつーかケッて言いたくなるわ、ほんま。
こう…キラキラーって…分かるやろ?何て言うの
、オーラ?偉そうなハンッて感じのオーラが出て
るんや。うん、風が気持ちええわ。さ、行こか。
「キャー侑士ーー!!」
あーまたや。練習やってのになんでこないに人お
るんかなあ。ファン、良くこないに熱狂的になれ
るなぁ。尊敬するわ(あ、前にも言った気がする
わ)俺が言うことやないけど。は何処や、は
。あーあそこか。ほんま…もっと前に出てくれば
ええのに。遠慮しとるんか…押されとるんか。ま
、あそこからやったら見えないこともないやろ。
しっかり見といてえな。
「行くで、岳人」
「オッケー、侑士」
お、相手は宍戸と鳳か。シングルスは無理やった
な。まあええわ。変にシングルスやったりして跡
部が来たら嫌やもん(もんって…!キモイ!俺キ
モイ!!)鳳のサーブから試合は始まる。ええサ
ーブやないの。せやけど…今日は勝たせへん…!
(はぁっ…結構疲れたわ…)
「なんとか勝てたなぁ」
「当たりめーだろ!宍戸と鳳なんかに負けっかよ」
「おう、随分な言いようじゃねーか」
「でも、良かったですね先生いなくて」
「あー着替えて跡部をからかいにでも行かね?」
「勘弁な、俺すぐ行く所あんねや」
「えー、どこだよ侑士!!」
「ひ・み・つ」
「キモッ忍足キモッ」
「ひどいやっちゃなーま、そういう訳や、ほんなら
また明日な」
「」
「あ、侑士君」
「待たせたなぁ」
「ううん、あのね、とっても格好良かったよ!テニ
スって面白そうなんだね!」
「そんなら良かったわ」
「この後どうするの?」
「んー、どないしよかなぁ」
ほんまは、このままどっか行ってしもたいけど慣れ
慣れしすぎるわ。まだ会って一日目やっちゅーねん
。せやけど、なんかなぁ。そないな感じせぇへんの
やなぁ。今日の俺はほんまどないかしとるわ。今考
えついた事やって…
「コート一つ空いとるなあ」
「…?」
「一回やってみぃひん?」
「で、でもラケット触ったことないし、ルールもよ
く分からないし…きっと下手だよ…?」
「ええよルールなんて。ラケットでとりあえず打ち
返せばええんや」
俺どないしてんのや。こないなこと普通もなにもせ
えへんて。なんか青春映画でも見てんのかいな俺は
。ラケットだけ持って…と、軽く打つべきやろな。
ほんま軽く…
「!?」
「こ、こんなんでいいのかなあ…?」
「ちょっと待ち!自分テニス初めてなん?」
「そうだよ…?どうしたの?止めちゃったけど…?」
女子にしては上手すぎるやん。初めてな訳あらへん
。そやけど、俺が気になったのはそこやない。この
打ち方…昔の…、ありえん、そないな訳ない…名前
がちゃうわ…第一あいつは…がテニスが初めてな
んて嘘吐く理由なんて何処にもあらへんし、それで
なんの得になるんや?せやけど、この打ち方は…
「ゆうし、くん…?」
「ああ、ごめんな。あんまが上手いもんやからボ
ーっとしてもうたわ」
「そんなことないよ、侑士君には敵わないもの」
「今日は終わりにしよか、送ってこか?」
「いいよ、会って初めてなのにそんな事までしても
らったら悪いもの」
「ほんなら、気ぃつけるんやで?」
「うんありがとう、じゃあまた明日ね」
そんなはずあらへんのや…そんなはずは…なんで思
い出すんや、このど阿保…俺に言い聞かせても無駄
や…今の俺にそないなこと言うても…くそっ…収ま
りぃや…頭ん中で色んなんが混じっとる。かき混ぜ
とるみたいや…今日は帰って何も考えへんで寝よ。
俺はこれから起こることもなにも知る由もなく記憶だけに翻弄されながら眠りに耽った