「呼吸をする方法」の続き





「ほら、おいで。クラス戻ろな?」
「い、やだ…」

俺が手を握って、クラスに連れて行こうとしたけどは駄々っ子みたいに座り込みよって動かんかった。何ていうかあれや、遊園地とかでまだ居たいとか言うて動かない子供みたいや。今までやったらきっと「手なんて繋ぎたくないし貴方なんかと居たくないから一人で戻って?」とか言われたやろうなて思うと笑えてきよった。むーっ、として座り込んで立ち上がる俺の方を上目遣いで見てくるからまたこうチューしてやろうかとか思たけどとりあえずあのクラスのやつらに殴りこも思ってたからそれはやめといた。それに余計むーってしてしまいそうやし。せやけど、「行こ?な?」って言うたら何にも言わへんで立ち上がって悔しそうに俺を見た。多分これは着いてくる気になったんやと思う。まあいかにも不本意や、って感じやけど。

「別に…今行って忍足君が何か言ってもどうせ私は嫌われているし…」
「そんな事あらへんて。は可愛えし頭もええし」
「何それ」

手を引いてクラスに向かう階段を登るんやけど、でもこうガツーンと革命?レボリューションを起こしたろ思ったからやっぱり引き返すことにした。ええ事思いついたし。

「やっぱりサボんで」
「え、ちょっ、どこ行くの!?」
「ええ所」





* * *





着いた所は何ていうかぶっちゃけて言ってまうとえーと、跡部ん家…なんやけど。目的は一つ。別に学校終わってから跡部と一緒に連れてきてもらっても良かったんやけど、どうせ「何アホな事抜かしてやがる、消えろアホ忍足変態眼鏡」とか言われそうやめっちゃ。まぁこれ鳳ん家でも良かったんやろう思うけど、まぁどっちでもええわ。跡部ん家前でじーっとと二人で待っとったら跡部がリムジンで優雅に帰ってきよって、俺達を見た。そしたらうげ!って感じのこう何て言うん?苦虫を噛み潰したような顔をしよった。ちょ、自分それ俺がいたからやろ。それはええねん。何するんや早くせぇって感じの目で俺の事ちょっと半信半疑で見とるの事を待たせて跡部に話をつけた。

その後、家に帰るのに明日これ実行しようと思うから泊まっていかへん?って聞いたら案の定零度の視線ってやつを向けられてしもた。そらそうやろな。って事で絶対何もせえへん、オカンもおるしアネキもおるからそっちの部屋におってくれればええんや言うたら着いて来てくれた。何や、ええ子やん。






* * *





「ほな、行くで。これ着たって」
「…何これ」
「ええんや、これでクラスの奴らにガツン、と言うで!」
「本当、忍足君の考えてる事は分からない」
「良く分からない俺は嫌いなん?」
「…どうなんだろう、でも、嫌いじゃないと思う。少なくとも他の人よりは」
「そか。そら良かったわ」

俺らが丁度教師が来る直前、皆が揃ってる時間にクラスの前に着く。都合よく、この人数の無駄に多い学校の割にここに来るまで誰にも会わへんかった。クラスのドアを力いっぱい、皆が驚いてこっちを見る位に開けた。そないしたらやっぱりクラス中の視線が集まる。どんどん皆の目が見開かれていってホンマおもろくて笑い出しそうやった。何でかて、そら決まってるやん。あんなにの事毛嫌いしてた奴らがの前で罵詈雑言どころか何にも言えなくなってるんやし。正直、しめた思ったわ。

「…忍足に、…お前ら何してんだ?」
「何って、見て分からへんの?」
「分かるわけねえだろ…」

クラスの男子の一人が話しかけてきよった。まあそら分からへんやろうな。いきなり朝っぱらから金持ち同士のパーティーで着ていくようなタキシードとドレス着てるんやからな。跡部に借りる時の俺の見立てはやっぱり正しかったで。は綺麗な黒髪やったし、それに今まではツンツンしとったから綺麗系の顔かと思っとったらよく見たらどっちかって言うと可愛え系の顔なんや。せやから、清楚な感じの白いドレスや。で、あんま胸元とかが開いてるやつとちゃうて、露出しすぎへんで裾は膝丈位のミニドレスっちゅうやつや。髪の毛は俺のアネキに言うたらノリノリでいじっとった。任せてたら今まで長く垂らしとった髪の毛を頭の横でヘアアイロンとか使ってふわふわにしてまとめとった。やっぱり俺は天才やで。うん、ホンマ。皆見とれとるのがそのええ証拠や。な、自分は可愛え言うたやろ。

「別人みたい…」
、だよね?」
「そうでしょ…?」

そん時やった。

「忍足!お前何そいつと仲良くなってんだよ!裏切ったのかテメェ!」
「裏切るって何の事や?裏切るも何もこの子と仲良くしないなんて約束した覚えあらへんけど?」
「こいつ…っ、ナメてんのか!?」
「ナメてるも何も…、この子は俺の姫さんなんや今後手ぇ出したらどうなるか知らんで?」
「!!」

「な?安心してええよ、もう」
「…、お、忍足君の考えてる事はやっぱり分からない…」
「今はそんでもええから」

手を握ったら、少しだけ握り返してくれたからそれでええんや。







反逆の宣言