「あ、宍戸だ」
「何だよその意外そうな言い方は。日直なんだから当たり前だろ」
「別に来てることに驚いたんじゃ無くて私より早いことに驚いたんだよ。亮君は良い子ですねー」
「馬鹿にしてんのか」
は教卓の所に椅子を持っていき頬杖をついて座っている宍戸を見た後、自分の席でもない一番前の中央の席に堂々と腰掛けた。が、朝早くで誰もいないのでその行為に全く問題はない。
は机に突っ伏した。
何故朝早くに宍戸とはすでに学校に来ているのか。
その理由は二人の担任にあった。担任の教師はのほほんとした雰囲気が特徴の大の植物好きであった。ちなみに男である。
その担任が自分の家で世話をしろ、というような植物を教室に持ち込んできたのだ。南国の島にでも生えていそうなもはや木だが、何でもデリケートらしく置いてある環境を変えた一週間はよく注意して世話をしないといけないらしい。
そこで担任が言い出したのは「一週間、その日の日直は早く来て世話をしてやってくれー」だった。
クラス中が自分でやればいいのに、と言いかかったが担任はのほほんとしているだけではなく天然だ。言っても無駄な事は十も承知だった。
そしてその一日目の日直が、運悪く宍戸とであった。
「宍戸ーその木の後はよろしくー眠い…」
「おまっ、寝てんじゃねーよ!」
「何宍戸のくせに」
「宍戸のくせにって何だおい」
「あんまり怒ってると禿げるよ」
「うるせー!」
突飛な行動をしてみたりするテニス部部員に手を焼く常識人代表の宍戸だったが、にはテニス部以上に手を焼いていた。
元々人のなす事やる事に巻き込まれがちな宍戸だったが、最近は随分あしらう事にも慣れてきた。それでもだけにはどうしても敵わなかった。
宍戸はったく…、と言いながら仕方なくじょうろ片手に木に水をやり始めた。
その手付きは至極適当そのもので、うっすらと起きていたが眠そうに「宍戸適当ちゃんとやれ」と言えば宍戸は「だったらお前がやれよ」と返した。はナチュラルにそれを無視したが。
宍戸はじょうろの中の水がなくなると教室の前にある棚にじょうろを置き、自分も教卓にベタっとだらしなく突っ伏す。
はそれを見ると、少し笑った。
「自分だって寝てんじゃん」
「仕事ちゃんとしたからいいんだよ」
「あそー、ていうかテニス部って朝練とかあるんじゃないの?行かなくていいわけ」
「あー岳人がいっから大丈夫だろ」
そう、岳人は宍戸やと同じクラスである。宍戸は朝練に来ない理由くらい岳人が跡部に説明してくれるだろう、と思っている。
はふーんとどうでもいいような返事をした。
「どうでもいいけどさあ、テニスとかって大変そうだよね、つうか運動とか無理。暑くて死ぬ」と言った。
の窓に向けられた視線の先には朝から辺りを照らしている太陽があった。氷帝学園の各教室には冷房が完備されているため、宍戸とがいる教室は全く暑さを感じなかったが、外で朝練に励んでいる運動部員はさぞかし大変だろう。
は想像しただけでも憂鬱になった。
「お前駄目だな」
「何が駄目なのその言い方ムカつくんだけど」
「何ていうか考え方が引きこもりとかニートっぽい」
「そう思うならそれでいいや別にニートにならないし」
「お前はなりそうだけどな、馬鹿だし」
「私より成績悪い宍戸に言われたくない」
「ちょっと待てお前何で俺の方が成績下って分かるんだよ」
「前にテスト返される時宍戸のテスト全部後ろからチラ見してた」
「どういう事だオイィ!」
「全部私より下だったよ良かったねおめでとう」
「今すっげえ見下された気がすんだけど」
「よく分かったね見下してるんだよ現在進行形で」
「ウザ!お前超ウゼエ!」
そう言い返してみてもはよっくりと目の覚めてしまった宍戸の方を向いてへらっと笑うだけだった。
どうせコイツに敵うわけがないんだ、と宍戸は諦めたようにため息をつく。
何部だかは定かではないが、ランニング中らしい部員達の掛け声が響いてきた。は本当元気だなあ、と洩らす。
「宍戸ーテニスって面白い?」
「いきなり何だよ…ま、そりゃあ楽しいからやってるんだけどよ」
「見てみたい、宍戸がテニスしてる所」
「……どういう風の吹き回しだ」
「別にいいじゃん、連れてってよ」
「まあ連れてってもいいけど」
「マジで?じゃあミスしたらブーイングしてあげるよ」
「じなくていいっつうの!」
宍戸はやっぱり来させない方が良かったか、と思い始めた。結局には敵わないのだ。
いつの間にか下らない事を話し込んでしまったらしく、次第に生徒達が教室にやってきた。宍戸とは自分の席に戻る。
すれ違い様、はこっそりと宍戸にありがとう、と囁いた。
宍戸は一瞬呆然としてしまったが、こんな関係もいいもんだ、と思った。
晴れ時々友情
友情系、とのリクエストでしたが書けているか自信がないです…!
駄文で申し訳ありませんが、リクエストありがとうございました!