「俺も…好き、や」
その言葉を聞いて、俺が出した解答はまさかの「はあ、そうですか」だった。
我ながらにしくじったと思う。というかそれ以前に先に告ったんが自分やのに、その返事にこの反応はあらへんわ、まじない。出かけた舌打ちを飲み込んで悔しい事に(ホンマ忌々しい事に)10cm高い場所にある謙也さんの顔を見る。
まるで俺の返事なんて聞こえんかったみたいにヘラヘラしながら顔を赤くさせていた。「ざいぜ、ん」と呼ぶ声に反応すれば「今日、うち来おへん?」の誘い。恥じらった表情で言うのは結構やけど、大胆すぎやろ。でも気分は珍しく高揚したのが分かった(ホンマこういうとこ自分がただの思春期男子やと思うわ)から、「行きます、わ」と返事をした。
少しどもってしまったのはホンマに計算外。これやとがっついてるみたいに思われるかもしれへんやん。
「へへ、今日な、うち誰もおらへんねん!タイミング良すぎっちゅー話やろ?」
「そっすね、せやけど謙也さん、エッチなんてしたことあらへんくせにそんなん気回してたんすか」
「あ、アホ!ちゃうねん、あ、いや、そらそういう気がなかったわけや無いけど、家に誰もおらんのはホンマに偶然やねん、な、せやからなんちゅーか、変態とか思わんといてな」
 「誰も変態やとか言うてませんし…」
脳天気なのかネガティブなのか偶に分からない時がある。まあ多分九割方は脳天気な方だと思う。頭はええはずなんやけど。
「謙也さん」
「なん?」
「せやったら、家行く前にコンビニ寄ってええですか」
「?お菓子と飲み物やったら家にあんで?」
俺はさっきと打って変わって小学生みたいな事を言い始めた目の前のアホな先輩に思いっきり(半ば嫌味で)ため息をついてやった。
「え、ちゃうんか」
「謙也さんちにまさかコンドームが完備してあるとは思えへんのですけど」
「…っ!あー、せやな、確かにあらへんな…」
 「せやから言うたんですわ…」
 「そやそや、ほんならコンビニやな。分かったわ、うん」
 妙に浮き足立って謙也さんは「白石に言われん内に練習戻らな」と言って(そういえば部活中だった)行ってしまった。謙也さんが早よしろと手を振っていたけれど悪い意味では無く、とても一緒に並んで戻る気にはなれず、それを無視して目の前の水道を意味もなく捻った。じゃぶじゃぶと溢れ出す水を見て、だからといって詩的な事を思うわけでも何でもなく、とりあえず顔を突っ込んで濡らした。息を止めて、少し苦しくなってから顔を上げて犬みたいに頭を左右に振って水を払う。いつもは絶対にしない。謙也さんはよくやってるけれど水が自分の方に跳ねる度に俺は謙也さんを軽く蹴る。
五分。さっきの五分の間に何があったんやろか。
冷静になって、思い出して、脳内で再現する。すき、そう言ったやんな。間違いやあらへん。
「…っしゃ」
気付いたら左手が小さくガッツポーズを取っていた。自分で若干引いた。



「…こっ、ここや!」
「何回も来てんでここが謙也さんちだってこと位分かってますけど」
「ま、ええから上がりって。親おらんから気ぃ利いたもてなしもでけへんけど、その分遠慮もいらんからな」
「お邪魔しますわ」
スニーカーを脱いで家に上がった。こんな時制服がブレザーだったら革靴なわけで、そしたらもう少し格好がついてたかもなあなんて考える。だから何やねん。俺アホか。
謙也さんが台所で飲み物を出しながら先に部屋に行くように促したから俺は軽く返事をして階段を上がって勝手知ったる謙也さんの部屋に向かった。ドアを開けて、足を踏み入れて、ドアを閉める。そうしたら、心臓がごとりと音を立てた。緊張、してるんやろか。近所のコンビニやから、と恥ずかしがる謙也さんの代わりに一人でコンドームをレジに出したさっきよりもずっとずっと緊張、しとる。
こんな、匂いの、する部屋やったやろか。
「飲み物、コーラで良かったか?」
「ええです、ども」
「コーヒーもあったんやけど無糖やったから、無糖は財前飲まへんやろ?」
「飲まないっすわ」
「せやろ、コーラにしといて良かったわ」
安心したように笑う謙也さんに、不覚にも下半身に電気が走った。いや、断じてまだ勃ってへんけど。結構ヤバかったのもホンマで。
「あんな、…どう、する?」
長い沈黙の後に謙也さんは至極聞き取りづらい声で呟いた。
「謙也さんがええなら」
「しゃ、シャワーとか浴びた方がええんかな!?部活の後やし、汗臭いと思うねん、けど」
「別に俺は気にしませんわ。寧ろ、」
その方が興奮する、とは言わんといた。どんだけ俺キモいねん。嫌んなるわ。
謙也さんがよう分からんことをごにゃごにゃ言ってるから、俺は謙也さんの肩をいきなり掴んでベッドに押し倒した。ぽかんとした顔をする謙也さんの唇に自分の唇を押し付ける。コーラを飲んだ後だから少し濡れて冷たかった。
「ざいぜ、」
「ええから」
間抜けに開いた口の歯と歯の間から舌を入れると、謙也さんの舌の先っちょにぶつかる。謙也さんの舌がびびって奥に引っ込むから俺はそれを追いかけてもっと奥まで舌を入れた。
「…ふ、ぅ」
鼻から抜ける声が気分良かったから調子に乗ってなすがままになっている謙也さんの歯列や歯茎を舐めまわしてる間に半勃ちになってきた。
「謙也さん、脱がしてええ、ですか」
「え、あ、その」
「脱がさんかったら何にも出来へんやろ」
「あ、そのそれはええんやけど、せやったら財前の事も脱がしてええか」
「…別に、ええですけど」
自分の制服と全く変わらない構造なのにお互い脱がすのにやけに時間がかかった。謙也さんのトランクスを脱がすのに少し抵抗してきたからイラッとした(謙也さんは俺のパンツを見て「ボクサー履いてるなんて随分ませとるやんけ」なんていらん事言ってきた)。
部活の合宿の風呂なんかでそれとなく裸なんていくらでも見とるけど、実際まじまじと見るなんてあるはずもなく、戸惑うっちゃ戸惑う。
「なんや、なんか知らんけど、めっちゃ恥ずかしいわ」
「そら全裸の男二人でベッドで向き合ってて素面やったらすごいでしょ」
「財前も、恥ずかしいんか?」
「…こんなん、初めてや、当たり前やろ」
「せやけど女の子とはしたことあるんやろ」
「…ぶっちゃけ謙也さんが初めてっすわ。キス、は、あるけど」
何で今更童貞やって言わなあかんねん。そもそも中二なんやから童貞やって普通やろ。
「そやったんか、めっちゃ、嬉しいかも、しれん」
「そっすか。…ていうか謙也さんの方こそまさか初めてっすよね?」
「あっアホか!!そんなんしたこと、あるはずないやろ…俺なんかチューすら初めてやっちゅー話やのに」
謙也さんは顔を赤くしてそっぽを向いた。押し倒されながらそないな事するなんてこの人はわざとやっとるんちゃうか、位思う。
俺は謙也さんの顔を上に向かせてまた唇を付ける。そうしながら謙也さんのちっさい(当たり前や)乳首を指で触り始めると謙也さんの肩がビクッとした。俺は構うことなく摘んだり押したりする。
「財前っ、なん、それ」
「何って謙也さんの乳首触っとるんですわ。気持ち良くならへん?」
男同士のエッチやから、男女みたいに上手くいくわけない。せやからいちいち手探りでどうすればええんかつかんでいかなあかん。
「気持ち良く…ってか、なんや、変な感じすんねん。びりびりって、くる」
「そらちゃんと気持ち良おなってるって事っすわ」
「これが、そうなん…?よお、分からんけど、…あぅ」
さっきよりも強く弄ると普段より高い声が洩れた。うすうす思っとったけどこの人マゾなんかな。
俺は調子になってぐりぐり弄る。謙也さんはもう喘ぎ声としか言いようがない声を出していた。謙也さんの股間を見るともう半勃ちとかいうレベルやなくて、まあ俺も人の事言えん感じやったけど。
俺は乳首から指を離してゆっくりと謙也さんのちんこを握った。
「ひっ、あ、財前、そこ」
「謙也さんのちんこ、触ってもええでしょ?」
「あ、うん、ええんやけど、せやったら財前のも触らせ、たって」
服を脱がす時もこんな会話した気がするわ。
「ええですけど、」
お互い触りやすいように一旦起き上がって向かい合う。体育座りの足を広げた形になって体を近づけて、お互いのちんこに手を伸ばした。
「どうすれば、ええんかな」
「謙也さんがしたいようにしてくれればええんすわ」
ぎこちなく俺のちんこを握ったり撫でたりする。されるがままは嫌やから、俺は少し強めに謙也さんのをしごいた。
「ざ、いぜ、ん…そない、あっ」
「なん、すか…っ、」
自分まで息切れしとるとかどんだけ興奮してるんや俺。
謙也さんの長い指がやわやわ触るもんやから、じれったくてむずむずする。
「謙也さん、も、ええから後ろ触りたい、んやけど」
「えっ、へ、後ろ?」
「後ろ弄らな、コンドーム買った意味ないやろ」
「せやけど、尻の穴やろ、汚くないん?俺、財前に汚いとか、思われたない…」
この人はどんだけ人を煽れば気が済むんやろ。
俺は謙也さんを思いっきり抱き締めた。どんなキャラや俺。
「俺は、謙也さんやったら別に、尻の穴とか気にせえへんし、正直、謙也さんの出すもんやったら、全然ええです」
「ざいぜ、」
「今やって、謙也さんの汗の臭いとか、興奮しとるし」
「財前、耳赤いで」
「うっさいっすわ」
承諾が得られたので、俺は謙也さんをまた押し倒して、腰を上げさせ、浮いた腰の後ろに手を回す。尻の割れ目に指を這わすと謙也さんがごくりと息を呑んだ。俺は親指と中指で尻を開き、人差し指で穴を探し、爪を立てないように挿し込んでいく。俺もちゃんと知っとるわけやないけど、女子と違って、そこは濡れたりしないから傷をつけないようにしなあかんらしい。
「なんや、財前、それもう、入っとんの…?」
「今んとこ人差し指の第二関節ぐらいまでっすけど」
「へ、んな感じ…っする」
謙也さんの違和感の訴え方がエロ小説とかそんなんと変わらんくて焦る。
思っとったよりスムーズに進んで、人差し指が全部飲み込まれるのに時間はかからんかった。とりあえず内側の壁を刺激したろと思って指を動かしたらある所で謙也さんがビクッと跳ね上がった。なるほど前立腺てここなんやな。
「あっ、ひ…そこ、ぁあっ」
「謙也さん、…エロすぎ」
「せやかて、そんなん、指、がっ、ふぃ」
「ホンマこんなエロいとこ他の人には見せんといて下さいよ。かなわんわ」
指を二本、三本と増やすごとに謙也さんの声が大きくなって、中もぎゅうっと指を締め付けてくる。指の出入れに尻の穴の抵抗が減ってきた。
「謙也さん、なんか、ハンドクリームとかあらへん?」
「え、ベッドの、脇の棚に…」
そう言われて一瞥すると思ったより分かりやすいところにあった。そう言えば乾燥肌やから結構使うとか言うとったっけ。
俺はそれを取って開け、贅沢に指に取り謙也さんの尻の穴に塗り始めた。ハンドクリームやから匂いは気にならへんくて、油とかにせんくて良かったと思った。
「な、ん、それ」
「こうせんと尻は無理ですわ。指ならええけど、ちんこなんて入らへん」
穴の入り口の周りには入念に塗ってやる。
そろそろ、大丈夫、やろか。
「挿れて、いいっすか」
「も、入っとる、やん」
「せやから指やなくて、俺の」
謙也さんは全裸やから丸出しの俺の勃ったままのちんこを見て顔を真っ赤にした。
俺は返事を聞く前に用意しといたコンドームの箱を開けてビニールから出そうとするけれど謙也さんに指を突っ込んどるせいて片手やきつい。そしたら謙也さんが上半身を起こしてそれを取り、開けて中を出した。
それからそれを興味津々な顔で眺めた後に(謙也さんの場合保健体育レベルの知識しかあらへんかったに違いない)俺のちんこに恐る恐る被せた。手際が悪くて、謙也さんの指やらゴムやらが俺のちんこを刺激して結構ヤバかった。それでも何とか付け終わって俺の顔をうるうるした目で見てきた。せやからそれはあかんて、はあ…
「挿れ、ますわ」
「お、おん、…」
謙也さんの上半身をまたベッドに寝かせて足の間に入り込み、自分のちんこを持って謙也さんの尻の穴に先を付ける。
俺もネットとかしか見たことあらへんけど、これでええはずや。先が穴に少し入ると、謙也さんは痛そうに眉根を寄せた。少し躊躇したけど、変にやめたり始めたりするのはもっと辛いやろと思って、機会を
見て少しずつ中に進んだ。
「ん…っく、ぅ、」
「謙也さ、キツ、い…っ」
当然や。元々尻の穴なんて子供作るための場所でもなんでもない。ゲイと変態以外誰が好き好んでもの挿れたりするんや。まあ俺がそこに入ってるわけやけど。
「ざ、い、…ふぃ、あ、あ、あ」
それでも何とか奥に進むと謙也さんの尻の肉がついに俺の玉の方に当たった。
全部入ったんや。
謙也さんの方は何が何だか分からない感じで声を出してる。
「あ、ひあ、っ…ああ、ぅ」
「け、んやさん、気持ち、ええ…?」
「よ、分から…ふぁあっ、そこ、は、あ」
前立腺か。
俺は痛いより少しでも気持ちええ方がええやろと思ってそこをちんこの先っぽでつつく。そうすると痛そうに顔をしかめとった謙也さんの口がだらしなく開いて喘ぐようになった。
俺が前立腺を刺激するたびに、穴の入り口がきゅっきゅっと締まったり開いたりしてめちゃくちゃ心臓に悪い。中もきつくて半端なく締め付けてくる。ダサいから出したくないのに、AV男優みたいな声が出てしまう。
「…ぅ、んあ、ふぃっ、ひ」
「ちょ、ほんま、っ、締めつけす、ぎ…けん、やさん」
「ざいぜ、ん…ざい、ぜん…」
「もっと…動いて、ええ?」
「う、ん、…すき、にせえ」
俺は謙也さんの腰に手を添え直して、ちんこを出したり入れたりし始めた。謙也さんの腰がびくびくして、腰を支えてる足はがくがく震えてる。それなりの速さで動かすと(男女のエッチみたいには無理やけど)俺の玉と謙也さんの尻が当たってパンパン鳴る。
ちんこを抜くような動きをする度に謙也さんの穴がコンドーム越しにきゅっと締め付けてきて、ホンマ半端ない。
「ざい、ざ、いぜ、んっ、はぁ、は、ひ、う」
「なまえ、下で、呼んで…や」
「う、ぁ、ひかる、ひか、るっ…」
「すき、…って、いって」
「すき…すき、や、ひかる」
「っ…俺も、すき…」
もうあかんと思った。
謙也さんの腰をぐっと抑えて行けるとこまで奥に突っ込んで、奥を突いた。その瞬間謙也さんの内側の肉が俺のちんこを全部締め付けてきた。
「も…っ、むり、やぁ、出、るぅ」
「だして、ええ…、ですよっ」
「ひ、ぅあああっ、あ、ああ」
最後に思いっきり突いたら、謙也さんの張り詰めて皮から完全に頭を出しとったちんこ(俺は身長は謙也さんより低いけどちゃんと剥けとる)が、精子を思いっきり出した。精子が覆い被さったっとった俺の胸とか肩にかかる。
「謙也さん、おれ、も、イきそ」
完全に息切れしとる謙也さんに突っ込んだコンドームの中に射精した。今までしたどないなオナニーよりも気持ち良くて、もしかしたら俺もうオナニーやイけへんかもなんて思った。
俺は元に戻ったちんこをずるっと抜いて、コンドームを外し風船の口を縛るみたいにしてそれをティッシュにくるんでゴミ箱に入れた。せやけど後でビニール袋にちゃんと入れてから捨ててもらお。
謙也さんは相変わらず腑抜けた顔で肩で息をしている。俺も疲れてたから謙也さんの横に全裸のまま寝っ転がった。
体を仰向けから横に向けて謙也さんが俺を見てきてへらっと笑ってきたから何となくその頬を指でつまんで引っ張った。謙也さん「いひゃいいひゃい」とか間抜けに騒いだ。俺はある程度満足して手を離した。
「財前、」
「光」
「へ?」
「光、って呼べ言うた、やないですか」
自分で言ってガキくさ、って思った。何言うてんやろ自分。アホらし。
「光」
「何すか」
「光、光」
「せやから何すかって」
「っ、お前が呼べ言うから呼んだっちゅー話やのにほんま可愛ないな!!」
「今更っすわ…」
「そら、まあ、そやな」
「謙也さんこそ、エッチんときまで間抜けな顔っしたね」
「うっさいわ、アホ!」
ギャーギャー騒ぐ謙也さんを適当に受け流してると、いきなり謙也さんは「でも、」と顔を赤くした。
「財ぜ、光は、いつもより、かっこよかったわ」
「っ………先輩、ほんま、アホやわ…」



運動部に入ってるだけあって、流石に体力はあるから俺も謙也さんも30分もすれば普通に起き上がってシャワーを浴びたり出来た。
謙也さんは俺が風呂に入ってる間に俺んちに電話して(勝手に)俺が謙也さんちに泊まる承諾をもらっとった。うちで何故か謙也さんの株は高くて、二つ返事でOKやったらしい。ほんましゃーないわ。
「よお考えたら明日平日やないですか」
「せやで。なんや、今知ったん?」
「つか謙也さん…知っとって俺ん事家に呼んだんすか…」
「ちゃっ、ちゃうねん、知っとって呼んだやなくて、知っててんけどこの機を逃すわけにはいかんかったっちゅーか…」
「…まあ、しゃーないすわ」
俺はそう言って、冷蔵庫を漁っとった風呂上がりの謙也さんの後ろから抱きついた。うなじに顔を埋めると、謙也さんの脱色した髪の毛の襟足が顔に当たってくすぐったい。
「い、いきなりどないしてん」
「謙也さん、髪の毛くすぐったいっすわ。腹立つ」
「そんなん知らんわ!!光が勝手に…」
「絶対」
「ん?」
「俺が卒業する頃には謙也さんの身長なんか抜かしたります。そんで、謙也さんを馬鹿にしたります」
「何やそれ…」
謙也さんは、困ったように笑い声を上げて俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。ワックスつけとったら振り払っとる所やったけど、風呂上がりでセットもしとらんし、別に、嫌やなかったからそのままにさせたった。人よりも大分低体温な俺やのに、もしかしたら熱があるんやないかと思うくらい顔が熱い。
謙也さんがぐりんと裏替えって俺に向かい合って背中に腕を回してきた。
「け、謙也さ…」
「俺、光ん事、すきや」
「…」
「すき、やで」
「…当たり前っすわ」
「光も、言ってや」
「……何回も言ったやないですか」
「せやけど」
「好きや、謙也さんのこと、すき」
「…うん」
この人、ほんまあほやわ。あほやから、多分、俺が見とかんとあかんから、一緒におらなあかんねや。



「ひーかーるー!早よ行くで!!」
「あーもー俺朝弱いんすからあんま大声出さんといて下さいよ」
謙也さんが玄関から叫ぶ。先行こうとしてんのかもしれんけど、謙也さんが先行ってしもたらこの家鍵開けっ放しになるて気付かんのやろか。
まあ、あほやからな。
いつも走って通うんだろう謙也さんが、今日は歩いて俺に合わせる。
「お、あれ白石やん。白石ー!!」
「謙也に財前やないか」
チャリ通の白石部長が、俺達に気付いてチャリから降りて謙也さんの横に並んだ。朝から爽やかオーラ出しとって何か知らんけどそこはかとなく腹立つ。
「今日一緒なん?謙也は走っとらんし」
「昨日うちに誰もおらへんくてつまらんかったから光のオカンに言って光俺んちに泊まらせててん。光と夜通しPS2やっとったら積んどったソフト全クリしてしもたわ!!」
それはほんまや。別に大した事もないホラゲを一晩中やっとったから、夜はなんてこたない男子中学生のお泊まりと変わらん。謙也さんがしょーもないホラゲにビビっとるのがおもろかったからええけど。
「楽しそうやんなあ。呼んで欲しかったわ…ユウジとか意外とホラーほんまビビりそうやもんな」
「せやったら今度はテニ部で集まろうや!!千歳もサボリ許さんで」
「そら、ええなあ。…あーっ、そや、今日保健委員の当番やった。先行くわ」
「おー、じゃあまたクラスでなー」
白石部長がチャリに足をかけながら、去り際に思い出したように言った。
「そういや謙也、いつの間にか財前のこと光って呼ぶようになったんやな」
白石部長が颯爽と去ってからの、謙也さんの真っ赤な顔は、俺が今まで写メった謙也さんのアホ面よりもオモロくて、めっちゃ、その、可愛かった。
 学校行って熱出たら謙也さんのせいや。そしたら思いっきり蹴り入れたろ。
 ほんましゃーないあほの謙也さんに。





 電車の中でひたすら書いてた(あほ!)光謙えろでした お粗末様!